QCM-D測定装置について

QCMとは?

QCMとは、Quartz Crystal Microbalanceの略称で、日本語では『水晶振動子マイクロバランス』と呼ばれています。

水晶の薄い切片から成る素子をセンサーとして用い、センサーを共振させたときに得られる周波数を連続的に観測しています。
周波数の変化を捉え続けることで、センサー表面の物質(膜)と、その表面上の液中に滞留したり動いている物質(分子)との間に生じる相互作用(表面に吸着したり、表面から脱離したり、といった現象など)を、リアルタイムに観測することができます。

QCM-Dの概要・特徴

一般的なQCM法では、センサーを共振させたときに得られる周波数を連続的に観測することで、周波数変化の係数「Δf」(fはfrequencyの意)のみを計測しています。

これに対して、Biolin Scientific社の『QCM-D法』では、Δfに加えて、センサーを共振させた後、瞬間的に共振を途中で止めることで、振動が段々と衰え、散って、消えていく様子(Dissipation = 消散係数、または散逸)も観測しており、これをΔfに対し「ΔD」と呼んでいます。
QCM-D法においては、ΔfとΔDの両方を、同時かつ連続的に観測しており、Δfからだけでは測定できない粘弾性や、ソフト膜の膜厚といった測定を、ΔDを変換することで実施が可能になります。
粘弾性や膜厚が得られることで、センサー表面上の形成物質についての構造的な変化(硬い、または柔らかい)や、物理的な表面吸着量(厚み = nm)といった、より具体的かつ詳細な物質情報を知ることが可能になります。
サービスイメージ2

従来のQCM法の問題点とは?

QCM(水晶振動子マイクロバランス法)は水晶振動子の発振を利用して分子の質量を計測する手法として60年代から薄膜堆積プロセスのモニタリングや特性の評価に用いられてきました。ここでは、この技術を便宜上、従来型のQCM(Conventional QCM)と呼ぶことにします。いわゆる、この「従来型のQCM」は以降さらに改良を積み重ねることにより、最終的に従来型を超えた拡張型のバージョンである「QCM-D」を生み出すに至りました。ここでは、この拡張型バージョンであるQCM-Dの特長を説明するために、まず従来型のQCMの基本原理と問題点を簡単にご説明させて頂きます。

QCMの動作原理/圧電性(ピエゾ効果)

QCMの中核は水晶です。 QCMセンサーは2つの電極間に挟まれた薄い水晶の切片から作られており、これを水晶振動子と呼んでいます(下図Aを参照)。水晶に機械的な歪みが与えられると電界が生じます(圧電効果)。逆もまた同様で水晶に電気をかけると機械的な歪みを引き起こします(逆圧電効果)。実際には、QCMセンサーの電極上に電圧がかかると歪みが生じ、この歪みがどう変わるかについては水晶のカット方法と電圧の方向に依存します。QCMでセンサーとして使用される水晶板は、結果として歪みのせん断が下図Bに示される様な厚さ方向になる様設計・カットされたものです。交流電圧が印加されると同期して水晶板は前後に振動します(下図Cを参照)。共振周波数はQCMセンサーの厚さに依存します(厚み滑り振動)

A) QCMセンサー(水晶振動子)の概略側面図と上面図。 QCMセンサーは水晶の薄片でできており、2つの金属電極の間に挟まれています。

B) 水晶に電圧がかかると、水晶の薄片は歪みます。 歪みの方向は、印加された電圧と水晶のカットに依存します

C) 水晶振動子に交流電圧を印加すると往復発振します

 

QCMセンサー(水晶板)とその圧電効果による動作原理を示す図

 

このとき水晶の共振する基本周波数をfとすると、水晶の共振条件は下記の式で表すことが出来ます。ここではhは水晶の厚さとなり、またλは波長、υqはAT-カット水晶の剛性率、nは倍音を示します。

f = n∙υq/(2h)= n∙υq/λ

 

Sauerbreyの式

上記の式から、水晶が厚いほど、共振周波数は低くなることが分かり、従って共振周波数は水晶の厚さを示すことができます。この原理に基づいて、1959年にドイツの Günter Sauerbreyによって以下の方程式が成り立つと報告されました。

この式はいわゆるSauerbrey方程式と呼ばれ振動する水晶の共振周波数と質量変化を直線関係でとらえていることが特徴となっており、実際に水晶振動子の表面に付加された薄膜の質量を計算する目的で用いることができます。層の付加による共振周波数の変化Δfを挿入すると、Sauerbrey式 から付加された層の質量、Δmを得ることが出来ます。

ここで定数Cは、質量検出感度と呼ばれる水晶の特性に関連する値を示しています。例えば周波数5 MHzの水晶の場合、Cは17.7 ng /(cm2)に相当します。パラメータnは、奇数高調波であり、1、3、5、7、…の様に奇数倍で増加していきます。

周波数-質量の線状関係は水晶が厚さh(および質量m)によって図1にあるように、f0(基本周波数)をもっておりこの純粋な水晶の挙動に基づいています。いわゆる従来型のQCMというのはこのSauerbrey式を解析に用いていることが特徴です。

 

Sauerbrey式の問題点

ここで、私たちはSauerbrey式の問題点を示すために、ある状況(シナリオ)を想定してみたいと思います。

例えば水晶と異なる材料の層が水晶表面に付加されたとします(下図右)。必要な前提条件は満たされているとすると、この状態は「水晶がより厚くなった」ものとして仮定することができます。つまり、厚さh +Δhの水晶(および質量m +Δm)且つ、その場合水晶の共振周波数はf <f0であり、このモデルは、水晶表面に付加された層が振動する水晶自体の一部になることを前提として仮定することができます。

したがって、この様なSauerbrey式のシナリオ通りに振る舞う材料を想定した場合、付加薄膜は純粋な水晶と良く似た材料特性を持つことが求められ、またセンサーの上の層は薄く、硬く、水晶表面にしっかりと接合している必要があります。これらの条件が満たされている場合にのみSauerbrey式は質量を計算するために用いることができるのです。

従って、水晶振動子センサー表面の付加膜が柔らかく、厚く、またはセンサー表面にしっかりと結合されていない様な場合が想定されると、Sauerbrey式を用いることは有効ではなくなるのです。このようなSauerbrey式の想定外のシナリオにおいては、モデル式は上手く機能せず、結果としてSauerbrey式で計算された質量は実際の質量よりも過小評価されてしまうことになります。

 

QCM-Dの測定原理

周波数fと消散Dを鐘の音に例えると?

f

鐘を震わせて鳴り響かせる
→発生した音響振動は一定の周波数の波を形成する
(frequency)

D

鐘を震わせた後、急に手で止めると?
→発生した音響振動は急激に散って減衰し消えていく
(Dissipation)

実際の測定の様子

まずは装置を用いて、ΔfとΔDの両方を、同時かつ連続的に観測します。
Δf、ΔDともに、各々最大7種類、合計14種類までのハーモニクス同時測定が可能です。

Δfの測定結果

周波数変化は、表面上での質量変化を反映しています。
分子が表面に吸着すると、周波数振動は減衰する方向に動きます。

ΔDの測定結果

消衰(散逸)係数の変化は、物性構造の変化を反映します。
ソフトマター構造を持つ膜が形成されると、消衰振動は増幅する方向に動きます。
測定の様子
最後に、取得したΔf、ΔDを変換して解析します。
測定結果の解析イメージ

アプリケーション(応用)

伝統的なアプリケーション例:洗剤の評価と洗浄のモニタリング~
QCM-Dを使えば、洗剤による汚れ除去過程とΔfとΔDの変化、汚れの膨潤と除去の様子が観測可能です。

汚れ除去過程とΔfとΔDの変化

汚れ除去過程とΔfとΔDの変化
この測定結果から分かる洗浄力の評価は以下の通りです。
チャンピオンメダル

洗浄力が良く反応も速い!

スタンダードメダル

洗浄力が良いが反応は緩やか

ロークオリティメダル

洗浄力が悪く反応も遅い

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