ご研究内容について簡単に概要をお教え下さい。
東京理科大学トライボロジーセンターでは,より実践的な先端技術のイノベーション拠点として機能すべく、高性能な分析・評価機器等を整備し,学外にもそれらの利用を開放しています。充実したトライボ関連ファシリティーと学内に蓄積された質の高い学識を活用することで、国内外の大学・研究機関や産業界との連携による産学連携体制を構築することにより、基礎メカニズムの解明から製品応用に至るまでの幅広い研究開発を通し、トライボロジーをベースとするオープンイノベーション実践の場として社会貢献できるよう活動しています。
Biolin Scientific社製のQSenseの存在はどうやって知りましたか? また導入の決め手は?
一般にトライボロジーは,マクロな現象として認識されますが、その挙動は摩擦表面への分子吸着によって大きく支配されます。そこで、表面への分子吸着現象を捉えるため、QCM法に着目した研究に取り組んできました。しかしながら、液体中で安定して精度の高い測定データを取得することは難しく悩んでいたところ、海外の研究機関による研究発表より、QSenseが非常に優れた装置であることを知りました。
Biolin Scientific社製のQSenseを貴所(研究室・部門)ではどのように活用していますか?
トライボロジー特性は、摩擦表面にどのような分子がどれだけ吸着するかによって大きく挙動が変化します。具体的には,潤滑油添加剤の表面への吸着しやすさが、摩擦低減効果などに大きく関与します。そこで,センサ表面に酸化鉄や炭素膜をコーティングすることで摩擦材料を模擬した表面を作り、添加剤分子の吸着特性を温度や分子の組み合わせなどを変化させて調べています。
ユーザから見たBiolin Scientific社製のQSenseの利点を教えて下さい。
QSenseの特徴は、吸着膜の粘弾性測定ができる点にあります。安定した精度の高い吸着量測定に加え、粘弾性測定も可能なことから、信頼性の高いデータ解析が可能になります。
今後のQSenseを使った研究のご予定や、弊社およびBiolin Scientific社に期待する点を教えて下さい。
摩擦面材料には、従来の金属に加え、セラミックス系膜やDLC膜、ポリマーなど、様々な材料が使用されるようになりました。これに対して潤滑油には、吸着性の添加剤の組み合わせを見出すことが強く求められています。現在のところ、吸着特性の計測に関しては、 QCM法が唯一の客観性の高いデータを得られる手段ともいえる実用的な測定方法となっています。そのため、今後も引き続き、潤滑油添加剤と摩擦表面との吸着特性とマクロな摩擦挙動との関係を明らかにするための研究に取り組んでいく予定です。Biolin Scientific社には、センサー表面のコーティング種の充実と低価格化を期待しています。
潤滑油添加時の吸着特性の測定手法は、データの解析を含めてまだ確立されたものとはなっていないのが現状です。QSenseの特徴でもある粘弾性測定値を活用したデータ解析手法の高度化、およびその知見の活用方法について、ユーザー間での情報共有と、新しい技術開発を推進する体制作りを期待します。
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