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界面活性剤の相互作用をリアルタイムで観察する

界面活性剤は、界面において活性特性を発揮する物質で、今日では様々な製品やプロセスに応用され、品質や性能を左右する重要な要素となっており、品質やプロセス管理の観点からも界面活性剤と表面間の相互作用のダイナミクスを解明することが求められています。今回は、界面活性剤と固体表面との相互作用を、QCM-D技術を用いてナノスケールで経時変化を観察・分析した実例をご紹介いたします。


界面活性剤の吸着挙動のモニタリングと定量化

家庭用洗剤や業務用洗浄剤、医薬品材料の調製、原油回収、化学機械研磨(CMP)、採鉱など、さまざまな製品や産業プロセスにおいて、界面活性剤と表面との相互作用は重要な要素を占めており、またこれらの相互作用について正確に理解するためにはナノスケールでの挙動を捉えることが重要になります。本研究ではリアルタイムで吸着挙動の観察が可能な Biolin Scientific社製のQCM-D装置を用いて、実際の界面活性剤と固体表面との吸着挙動を分析いたしました。測定に用いた界面活性剤はTriton-X-100とOctyl-β-D-グルコシド(ßOG)の2種類で、QCM-Dによる測定を通じて以下の項目の分析を試みました。


・界面活性剤の吸着ダイナミクス

・吸着された界面活性剤の量

・界面活性剤と表面の相互作用の安定性


※バッファ液にはPBS(pH=7.4)を用い、吸着表面となるセンサーは金(Au)を使用しました。


界面活性剤の相互作用の比較

以下に示す結果(図1)より、Triton X-100とβOGの両方が表面に吸着することがわかりました。しかし、飽和するまでの時間は両者で異なり、濃度が低くてもTrition X-100の方がβOGよりも早く飽和し、またβOGはTriton X-100よりも厚い層を形成し、リンス後もTriton X-100よりも多くのβOGが表面に残っていることがわかりました。


図1. 界面活性剤Trition X-100とβOGがセンサー表面吸着時に形成した膜厚の経時変化


2種類の異なる界面活性剤と表面間の相互作用について分析から得られた事実は以下の通りです。

・Triton X-100はβOGよりも早く飽和状態に達する

・βOGは柔らかい膜を形成する

・Triton X-100は硬い膜を形成する

・βOGの方がTriton X-100よりも厚い膜を形成する


おわりに

日常多くの分野で目にする界面活性剤を組み込んだ製品やプロセスにおいては、界面活性剤と表面の相互作用のナノスケールでのダイナミズム、つまり動的な挙動の把握と解明が常に必要とされます。Biolin Scientific社のQCM-D技術を用いた分析では、様々な異なる基板材料と実験環境条件の組み合わせの下で界面活性剤と表面間の相互作用プロセスに関するデータや情報を提供することが可能です。これら界面活性剤と任意の表面間の相互作用を数値で定量化することにより、現在様々な分野や用途において用いられている界面活性剤の適合性に関して妥当な評価を行い、結論を導くことが可能になります。



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