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CMP(化学機械研磨)とQCM-Dの応用


目次[非表示]

  1. 1.CMPプロセスの成否を知るために~QCM-Dの応用
  2. 2.CMPプロセスにおける化学変化を可視化し、最適化する
  3. 3.QCM-DでCMP工程における吸脱着と相互作用の全体像を把握する
    1. 3.1.CMPにおける分子の吸着・脱着の例 
    2. 3.2.QCM-Dを研究に用いる場合の実用例
  4. 4.おわりに


CMPプロセスの成否を知るために~QCM-Dの応用

半導体等における化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing, あるいはChemical Mechanical Planarization, いわゆる“CMP”)工程の成否については、ナノスケールの世界で起きている物質間の表面相互作用の結果に依存しているということもできます。高性能スラリーの開発やカスタマイズ、不純物の管理と低減のための工程改善、信頼性の高い新たなCMP工法の実現など、いずれの目的にも、対象表面で起きている分子間の相互作用を理解し、コントロールすることが重要になります。


私たちはこのようなCMP工程の管理と改善に役立つことのできるソリューションとして、Biolin Scientific社のQSenseが提供するQCM-D技術を、分子-表面間の相互作用解析や関連プロセスの最適化に応用頂くことを推奨し提案致します。例えば以下のような用途にQSenseのデータを活用することが可能と考えます。


・添加剤-表面間の物質相互作用のリアルタイム観察と解析

・残渣物除去成否の判定

・表面のエッチング工程の管理


CMPプロセスにおける化学変化を可視化し、最適化する

CMPのプロセス管理においては、各工程で起きている物質の化学変化を正確に把握することが成否を左右する鍵になっており、各々の最終用途に合わせてこれらの化学変化をコントロールし最適化しておくことが望ましいとされています。従って研究開発現場において、新しいスラリーや工法の創出、または既存のスラリーの改良といった各過程においても、CMPに用いる物質の化学的性質や実際に表面で起きている相互作用を理解することが常に重要であることは言うまでもありません。このような研究開発・工程改善の現場において、QSense技術を使用することで、例えばスラリーの添加剤の特性や、表面との間に発生する相互作用を知ることが可能になり、また関連するプロセスに応用することで、例えば以下のような疑問を解消することもできます:


✔このスラリー添加剤はターゲット表面とどのように相互作用する?

✔添加剤の効果は濃度によってどのように変化する?どの濃度が最適?

✔添加剤の除去率は?

✔CMPの洗浄剤は、どの程度残渣を除去できるか? また再付着防止効果は?

✔スラリーは対象表面の材料に対しどのように作用し、エッチング効果はどのくらい?


QCM-DでCMP工程における吸脱着と相互作用の全体像を把握する

Biolin Scientific社のQSenseは、表面相互作用プロセスの研究において視野を広げることができる表面センシング技術です。QSenseは、散逸モニタリング技術(QCM-D)を搭載した水晶振動子マイクロバランスの共振を基本原理にしており、表面材料やコーティングのナノスケールでの質量を捉え、解析によって膜の厚みや粘弾性の変化を研究することができます。QCM-D法は時間分解型の測定であるため、相互作用プロセスをリアルタイムで追跡することが可能です。解析可能な相互作用には、吸着、脱離、分子結合、膨潤や架橋作用などの構造変化があげられます。例えば、添加剤、添加剤混合物、研磨剤が対象の表面とどのように相互作用するかを分析して比較することができます。

CMPにおける分子の吸着・脱着の例 



図)QSense 分析を使用して異なる添加剤の性能と挙動を比較する方法の模式図(実際の縮尺スケールとは異なりますのでご注意下さい)。この例では、(A)の測定条件に対して、青文字のパラメータ設定を変化させた4つの異なる測定を示しています。(B)では添加剤の濃度を下げ、(C)では表面材料を変更し、(D)では異なる添加剤を使用しています。時間分解質量曲線から、それぞれの測定における添加剤-表面間の相互作用の反応性(効率)と、添加剤の質量変化がわかります。


QCM-Dを研究に用いる場合の実用例

実際の表面相互作用のプロセスは、環境条件にも大きく依存します。そのため、実際にQCM-D装置を用いて実験する際には、事前の設定においてこれらの環境条件を実条件に類似する様合わせておくことが非常に重要です。図1に例示されているように、QSenseの条件設定においては、プロセスに関連するすべての主要なパラメータを変えることができますので実条件との相異や乖離がないかチェックすることをお勧めします。


QSenseの実験や条件設定においては例えば、以下の要素を変更しながら比較実験を行うことが可能です。

(条件設定の範囲など詳細については別途お問合せ下さい)


・表面に選ぶ材料(センサー)と、送液し表面と化学反応させるための試料溶液

・溶液のpH設定

・温度条件

・添加剤の有無の選択

・添加剤濃度の変化と相互作用への影響


おわりに

私たちはBiolin Scientific社のQSenseは、CMP プロセスの成否を決定する重要な要素である、物質と表面間の化学的な相互作用(以下例参照)を理解するために用いることができる有益なソリューションであると考えています。QSenseの実際の測定方法や、運用におけるポイントなど是非お気軽にコンタクトの上ご相談いただければ幸いです。


・CMPプロセスに用いる対象表面の材料を変えて、相互作用の変化を比較測定

・CMP洗浄後の測定-残留物を除去するため追加の改善工程が必要かどうかの判定

・添加剤を使用する工程上のポイントの把握と、添加剤のエッチングまたはパッシベーション工程への影響度を知る

・スラリーの化学的な除去効果またはエッチング率の定量分析


※QSenseのCMPへの応用方法についての詳細は、以下Biolin Scientific社のサイトへもアクセスの上、概要をダウンロード頂けます様お願い致します。

 QSense Analysis in Chemical Mechanical Planarization


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