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タンパク質の吸着プロセスをQCM-Dで解析する

前回までのブログでは主に洗浄に関するプロセスをQCM-Dを使って解明してきましたが、今回は分野を変えてバイオ医薬応用分野におけるQCM-Dの活用法について実例を交えて以下に述べたいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.タンパク質とシリコーンオイルの相互作用
  2. 2.QCM-Dによる模擬試験 : タンパク質吸着プロセスのモデル化
  3. 3.界面活性剤によるタンパク質の吸着防止効果を解明
  4. 4.QCM-Dによってタンパク質の挙動を解明する



タンパク質とシリコーンオイルの相互作用

皆さんは病院で一度は注射や点滴などを受けたことはあるのではないでしょうか。


例えば一般的に病院で患者さんに治療用としてタンパク質成分を投与する際には、ガラス製のシリンジ容器等に液を充填し、注射等によって投薬されることが多いと思います。このときシリンジには潤滑剤としてシリコーンオイルが用いられるのですが、このシリコーンオイルには潤滑効果とは別にタンパク質と相互作用し吸着することでシリンジ内のタンパク質の量を損失させてしまうというリスクも併せ持っています。そこでこのような損失を防ぐため、これまでの研究で界面活性剤にはタンパク質のシリコーンオイルへの吸着リスクを抑止低減させる効果があることが判明しており、添加剤として多く用いられています。では、なぜ具体的に界面活性剤を添加すると損失リスクが低くなるのでしょうか?このプロセスを解明しより深く理解するための研究手段として、まさにQCM-Dが応用されています。ここでは、界面活性剤の有無がタンパク質とシリコーンオイルの相互作用にどのように差異を与えたのかについてQCM-Dの測定データをもとに概説していきます。


QCM-Dによる模擬試験 : タンパク質吸着プロセスのモデル化

シリコーンオイルまたは水とタンパク質間の相互作用を解析するため、シリコーンオイルを潤滑剤として用いる一般的なシリンジ内のタンパク質製剤の挙動を模擬したモデルシステムを構築しました。シリコーンオイルをスピンコートでガラスセンサ上に塗布したセンサーを用いることにより、シリコーンオイルで潤滑したシリンジ表面を模倣し、異なる2つの非イオン性の界面活性剤(ここではサンプルAおよびサンプルBと呼称します)と共にモデルタンパク質溶液に曝露し、QCM-Dを用いてΔfおよびΔDによる反応挙動を追跡、比較しました。


界面活性剤によるタンパク質の吸着防止効果を解明

図1は界面活性剤添加時のタンパク質-シリコーンオイル間の相互作用における質量変化をリアルタイムで追ったものを表しています。界面活性剤サンプルAについてはタンパク質溶液に添加すると吸着量の合計が小さくなり、界面活性剤を一切添加しない場合に比べて小さくなる事が示されました。しかしながらもう1つの界面活性剤であるサンプルBの方については溶液に添加してもタンパク質の吸着量は大きく変わりませんでした。この挙動の違いから推定すると、サンプルAはモデルとして使ったタンパク質よりも表面に対して速い吸着挙動を示しているのではと考えられます。これにより、サンプルAは表面に先にタンパク質吸着を防止する保護層を形成することが可能になり、界面により遅く結合するサンプルBと比較するとタンパク質吸着を防止する効果があると言えます。

図 1:3つのサンプルi)タンパク質単独注入時の質量の時間軸変化、ii)タンパク質にサンプルAを添加した場合 iii)タンパク質にサンプルBを添加した場合


QCM-Dによってタンパク質の挙動を解明する

上記に挙げた実例からQCM-Dは、タンパク質の相互作用変化を追跡する方法として有効であると判明しました。まだまだ不明な点が多いタンパク質とあらゆる物質間の相互作用一般について、そのプロセスを解明するツールとしてQCM-Dをバイオ研究分野の皆様にもお役立て頂ければ大変幸いです。

またタンパク質の任意の表面に対する吸着能力を調べられるということは、即ち対象となる任意の表面の任意のタンパク質試料に対する「非吸着性」をも同時に調べることができるということと同義です。例えば最近のトレンドとして、水回り設備・製品の表面へタンパク質非吸着性のコーティングを施すといった「アンチバイオファウリング」加工の効果などを定量的に調べるツールとしてもQCM-Dは有効に活用されつつあり、同分野においても今後のスタンダードな物差しとなることが期待されております。

<原典> Biolin Scientific AB, Surface Science Blog "Analysis of protein adsorption to a silicone oil/water interface" written by Kenneth Olsen PhD, Senior Staff Scientist at Biolin Scientific 


  Analysis of protein adsorption to a silicone oil/water interface Here we present a summary of how protein adsorption to a silicone oil/water interface was analyzed in the presence and absence of surfactant. https://blog.biolinscientific.com/analysis-of-protein-adsorption-to-silicone-oil-with-and-without-surfactant





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