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ソフトマターの世界とQCM-D

ソフトマターの世界を解明する

目次[非表示]

  1. 1.ソフトマターの世界を解明する
    1. 1.1.ソフトマターとは?
    2. 1.2.ソフトマターの世界と広がる応用分野
    3. 1.3.ソフトマターの世界を科学し解明する~QCM-Dが役立つこれだけのこと
  2. 2.QCMとQCM-Dの違い~“D”でわかるこれだけのこと
    1. 2.1.QCMとQCM-Dとは?
    2. 2.2.“D”の凄さ~有りと無しとでは大違い!
    3. 2.3.“D”でわかるこれだけのこと
      1. 2.3.1.①材料と表面の反応時間・速度
      2. 2.3.2.②材料と表面の反応の空間的な広がり
      3. 2.3.3.③ 高分子と低分子
      4. 2.3.4.④形成物質の構造情報(粘弾性・膜厚)

ソフトマターとは?

ソフトマターとはいわゆる柔らかい物質を総称する言葉で、ソフトマテリアルとも呼称されます。コロイド状の溶液や、生体膜・生体分子、ゾルなどの物質を指し、洗剤、化粧品、乳化製品、タンパク質、ゼリー食品など日常的にも身の回りに存在しているものです。

例えば洗剤が衣類の汚れを落とす、つまり界面活性剤が汚れ分子に反応し衣類表面から脱離させる際の相互作用等、あなたのすぐ身近なところでもいわゆるソフトマターを構成する物質による、ソフトマター的な振る舞いが日々起きており、観察することができます。

ソフトマターの世界と広がる応用分野

ソフトマターの物質は柔らかい=内部の自由度が非常に高いという性質を持っており、その「柔軟さ」故に、多くの既存のソフトマター応用分野にあっても更なる改善と発展の余地を残しております。

またソフトマターは様々な異なる分子によって構成される非常に複雑な構造を持った集合体であるため、未だ解明できていない部分も多く存在し、これまでに考えられていない応用方法による新規材料発明・開発の可能性を秘めた非常に将来性のある分野であると言えます。

例えばソフトマターの物質挙動にはまるで意思を持ったかの様に振る舞う「自己組織化」という性質があり、バイオ・医療分野等においてはこの性質を応用した多くの新しい技術開発が行われており、このような新規分野の開発がソフトマターの世界に更なる発展と広がりを与えております。

ソフトマターの世界を科学し解明する~QCM-Dが役立つこれだけのこと

上記の通り、ソフトマターの物質は柔軟性が高いが故に、その構成物質が実際に内部でどのような振る舞いを起こしているのかについてはこれまで未解明な部分が多く存在し、研究者の悩みの種となってきました。

私たちはそのソフトマターの世界を科学し解明する方法として、QCM-Dをご提案いたします。QCM-Dは水晶振動子の共振を応用して周波数の変化(Δf)とその散逸(ΔD)を連続的に測定する、いわゆる超高精度の微量天秤システムであり、リアルタイムで微小な液体・固体界面の空間における物質間の相互作用を解析することができる画期的な手法です。

特に単に質量の変化を見るΔfのみならず、散逸係数であるΔDの変換により、ソフトマターを形成する物質が持つ最大の構造的な特徴である「柔らかさ」を、例えば粘弾性といった数値指標で解析できる様になった点が最も魅力的な部分です。

またソフトマターの柔らかさ、自由度故に起きる複雑で様々な反応挙動については、Δf、ΔDの合計14個ものハーモニクスの同時取得と解析で追跡し、スピードの速い吸着・脱離反応にも対応すべく最速約0.005秒の超高水準の時間分解能をも備えております。

更に吸着反応においてはΔDの解析変換により、吸着膜厚を測定することも可能になっております。
弊社の提案するQCM-Dは、膜厚と粘弾性と反応スピードというソフトマターの振る舞いを構成する3つの重要な要素を明らかにすることによって、これまで見えなかったソフトマターの世界に光を当て、研究者の皆様と応用分野の発展に貢献致します。

QCMとQCM-Dの違い~“D”でわかるこれだけのこと

QCMとQCM-Dとは?

QCMとは一般的に水晶の薄片を連続的に共振させて周波数変化(Δf)を検知して、物質の微量な質量を測定する技術であり、測定中共振を止めずΔfを追跡し続けます。

これに対しQCM-Dは毎回共振を発生させた後に共振を止め、また周波数を変えて共振を発生させ、といったサイクルを超高速で繰り返し続けており、この共振を止めたときの振動が減衰・散逸して
いく様子(Dissipation=ΔD)をΔfと同時に観測できる点がQCM-D法の付加価値となります。

つまり単純に測定できるパラメータがΔfとΔDの2倍になることで、同じ物質を測定してもより測定内容に深みが加わるのです。

“D”の凄さ~有りと無しとでは大違い!

Dissipation=ΔDの有無は同じ測定を実施したとしても大きく違いを生み出します。

例えばΔf単独では柔らかい物質を測定した場合に、その柔らかさの度合いまでは推定が困難です。

しかし、Δfに加えてΔDがあれば、その物質が如何に柔らかいかを推定する指標(粘弾性、膜厚、各ΔDのグラフの挙動追跡)を得ることができます。

ΔDが1つ加わることで、これら指標を基に材料構成分子の変更、最良の組み合わせの発見など、開発現場における具体的な方向と指針を定めることができるのです。

ΔDがない場合、これらの指標を正確に推定できず、材料変更・組み合わせの効果を検証することも難しくなります。

“D”でわかるこれだけのこと

Dissipation=ΔDは上記で述べた通り、解析をすることによって粘弾性、膜厚といった材料構造を推定できる指標となる数値に換算することが可能です。

また弊社QCM-D法におけるΔDはΔf同様、基本周波数以外に6つの奇数倍の各ハーモニクスを同時に取得することが可能で、合計7個、Δfも合わせると合計14個ものパラメータを得ることが可能です。

この複数のハーモニクスを超高速(毎秒最速200データポイント=0.005秒毎)で取り続けることができる特長により、Δfに加えたΔDの総合解析により以下の様な材料に関する真実がわかるようになります。


①材料と表面の反応時間・速度

センサーとして使用する水晶薄片の表面に形成された薄膜に対し、送液供給した材料分子が如何に速くあるいは遅く吸着・結合・脱離するのか、といった動的な挙動を追跡、いわゆるスピード感についての情報を得ることができます。

これはQSenseのΔD測定における超高水準の時間分解能(最速0.005秒)があってこそ初めて観察可能なプロセスです。


②材料と表面の反応の空間的な広がり

Δf、ΔDとも基本周波数での測定はセンサー表面上のフロー空間全体に響き渡り、奇数倍のハーモニクスが3倍、5倍、7倍と高くなっていくにつれ、中央部と界面近傍の微小空間に段々と守備範囲が狭くなっていきます。

この情報を応用して、各ΔDが示す挙動の違いを観察することによって、仮に固体であるセンサーの表面と送液する試料液体との界面のごく近くで起きている変化と界面より離れた空間で起きている反応に明確に違いがあった場合に追跡が可能になります。


③ 高分子と低分子

上記②の各ハーモニクスの守備範囲と感度の違いを応用して、反応分子が高分子か低分子かについて類推をする手がかりを与えてくれます。


④形成物質の構造情報(粘弾性・膜厚)

既に述べてきた様に、ΔDを解析することによりセンサー表面に形成されているソフトマター物質の構造情報が明らかになります。

具体的には粘弾性と膜厚であり、如何に柔らかいか、またどのくらいの量的なスケールで吸着したのかについてが明らかになり、材料開発に役立つ指針となる情報を与えてくれます。

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